myママライフ01 フォトグラファー 中川正子さん

転機になった南三陸取材と
直感力の話

愛くるしいサイちゃん

“ちっこい相棒”という表現がよく
似合う、愛くるしいサイちゃん

—仕事の状況も、日々変化していますね。

私が昨年9月に一緒に(ママ雑誌『Neem』の取材で)南三陸行ってから、ものすごい(仕事の)ギアを上げたって話をしたよね。
南三陸へ行く前は、東京で保育園に入れてなかったから仕事のたびに親に預けて、
いただいたお仕事に行って帰ってくるので必死なくらいの時期で…
それが6ヶ月前って思うと信じられないけど、半年でこんな変わっちゃって。
でも、あそこで、やっぱり私、写真を通してやりたいことがまだまだありすぎるって確信したし、
世の中のためにちょっとでも何かしたいって気持ちがあったけど、何すればいいかわからなかったのが、
「私にはやっぱり写真だ!!」って思うきっかけになったのがあの南三陸だったから。
それで、保育園にフルで預けて仕事することを決めたんだ。

—ちょうど南三陸のあとに、正子さんが「産休が終わった」って言っていた言葉がすごく印象的で。

あー、そうそうそう。あれ、正確には俊男くんに言われたの。「やっと産休終わったね」って。
一瞬ちょっとムッとしたのね。だって私、サイちゃん生まれて1ヶ月半で復帰してるんだから何言ってんのって思ったの。
でも、やっぱり彼の言葉はいつも的を得ていて。本当にそうだなー、意識のはなしだなーってわかったの。
それまではサイちゃんを育てる暮らしがメインで、その中で捻出した時間で、写真をスポットでやっているっていうか。
ずーっと毎日連続した形で写真をやっているっていうのとは程遠かったんだよね、今思えば。
だから、あの旅がすごくきっかけになって。
時期的にもね、サイが2歳半になっていたのも大きかったんだと思う。今なら行けるーみたいな感じで。
彼も自分の世界が始まりつつあったから。

—でも本当に、半年前の話じゃないみたい。もっと昔のことのように感じます。

ほんとにそう!でも、子育てってみんなそうじゃない?
なんか大人が半年スパンの話をしても「いやー、相変わらずですよー」ってなるけど(笑)。
子育てだと、0歳児なんか1週間1週間違うステージって感じだったし。
ただ、今は自分もサイの進化に合わせて一段抜かしくらいで階段昇っているような、そんな感じがする。
でも、いつも階段の先はなんにも見えてなくて、もう目の前の次の階段にステップ合わせて、行くのに精一杯。
それが螺旋階段なのか、まっすぐに伸びた階段なのかもわからないんだけど、そんなことは考えている暇もなくて。シャッシャッと足をどんどん前に出して行くうちに、
わー、こんな高いとこまできてたーっていう、そんな感じ。ああ、階段っていいうよりはね、なんかね、サーフィンの方が近いかな。
しかも海じゃなくて、川でボードに乗っているイメージ。足もとにものすごい流れを感じるから、私はボードの上に立てていても、バランスを取るのに必死なの。
必死だけど、楽しいんだよ。でも、ちょっと転んだらだいぶ危ないから、必死にバランス取っているうちに、その濁流の流れに乗って、随分遠くに来ちゃったねーみたいな。
そんな感じ。たまにフッと降りて、なんだここはーってあたりの景色を見渡して感動する。
もといた場所が超遠くに見えてて、あんなとこいたよねー、って人ごとみたいに遠く思うような。
さっきの保育園に預けてなかった頃の話とか、まさにそんなイメージ。でもね、その頃はそれがベストな選択だと思っていたんだよね。
だからあのときもっと早く預けていればよかったのにーとかは全然思わなくて。全部そのときどきのタイミングだと思ってる。

—そのタイミングを、うまく掴んで進んで行くにはどうしたらいいのでしょう。

それぞれのひとがその人の性質にあったやり方ってあると思うから、えらそうなアドバイスは全然できないけれど、 1回1回の選択を、
いつもよりもっと切実にやってみたらおもしろいかもしれない。私がやっているのは、ふたつの分かれ道があるとするでしょ。
そのときに、想像するとワクワクしたり、明るい感じがしたり、ああいいなーって思う方を、選んでる。
なんかわかんないけど絶対よくない感じがするーっていうのは、条件がどんなによくても選ばない。そういうのの繰り返し。
ちっちゃいことでいうと、入るお店だったり、最寄り駅がふたつあったらどっちしようかなーとかそういう選択も含めて。日々そういうふうにしてる。

—そうしていくうちに、直感力が鍛えられそう!

それはあるかも。今度、仕事でサイ連れて沖縄に行くんだけどね。その帰りの移動日に、別の仕事の依頼が入って。
5年間続けさせてもらっている雑誌の表紙撮影なんだけど、ちょうど編集担当の人がその号で変わるのね。
で、撮影するカバーモデルが、長く撮らせてもらっている女優さんで。彼女がまだ結婚してないときから撮っていて、
私の出産後にサイを現場に連れて行かせてもらって撮っていて、彼女が妊娠しているときに撮っていて。ずっと付き合いがあるから、受けたいなーって強く思ったのね。
で、その沖縄の仕事をプロデュースしているのが友達で、「今更ちょっと申し訳ないんだけど、飛行機変更ってできるかな」って相談したら、
「今変えたら料金がプラスになっちゃうから厳しいかな」って答えで。でも、正直にその仕事の話をしたら、
彼女が「直感で正子はその仕事を受けなきゃいけないって思ったから、受けよう!飛行機はなんとかするから!」って言ってくれたの。
いつもだったら、私もそこまで頑張って予定を変更してまで仕事を受けたりはしないんだけど、もう理屈ではなく、この節目を受けないのはよくないなっていうのがあって。
その友達はもともと直感力みたいなのがあったんだけど、子どもを産んでから決断しなきゃいけない機会が増えて。
しかも子どもを産んでからその決断力がますます早くなっていて、ほんとうに色々助けられてるんだ。

—出産を経て研ぎすまされるっていうのは、よく聞きますね。

母親になったら…って一括りにするのも乱暴だけど、やっぱり、動物的な行為を経て母親になっているから、危機察知とかもそうだと思うんだけど、
そういうアンテナが出産前より出てる気はする。私の中ではザラッとする感覚っていうのもよくない感じのひとつで。
その予定のこと考えると、何かザラッとした気分になるときは、絶対にやらないほうがいい。
とにかくそのことを考えると、何着ていこうかなとかワクワクするような予定は、絶対にやったほうがよいと思ってて。
だから私の場合は直感力っていう大層なものではなくて、感触みたいなものというか。

—それを一人ひとりが生活の中でできていったら、ハッピーな予定ばかりになりそう

そう思う。ハッピーな予定ばかりの人生でなくても別にいいと思うんだ。起こることってぜんぶ意味があるもんね。でも、わくわくはすごく増えるんじゃないかなー。